今回読んだ本は、少し前にNHKでも特集が組まれ、書店でも特設コーナーが作られていたのでご存知の方も多いと思います。

東田直樹さんの、跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていることです。

重度の自閉症であり、会話がスムーズに行えない著者が、自身の気持ちや社会との関わり方などについて綴ったエッセイです。
途中、記者からのインタビューに答えた時の文字起こしが入っており、記者のかなり突っ込んだ質問が自閉症を持つ方々への理解を助ける一助になっています。

エッセイの形なので、比較的すぐに読めてしまうライトな書籍ですが、印象に残った部分と、僕の心に残った部分を抜粋してご紹介します。

変わった人だと思っていたけど…


僕は、二十二歳の自閉症者です。人と会話することができません。  僕の口から出る言葉は、奇声や雄叫び、意味のないひとりごとです。普段している「こだわり行動」や跳びはねる姿からは、僕がこんな文章を書くとは、誰にも想像できないでしょう。

冒頭のまえがきです。

街や電車でもよく見かける光景だと思います。
一人でブツブツ喋りながら、目的もなくウロウロしている方を見かけること。
著者は自らのそういった行動を目にした人々からの視線は「刺さるような視線」と表現しています。

以前の僕も同じように関わろうとせず、刺さるような視線を投げていたかもしれません。
“自分とは違う人”というレッテルをつけていました。

でも自らが自閉症であり、そういった行動をとってしまう著者が、「こんな文章を書くこと」ができると体現している本書は、僕にとって驚きの連続と、新しい視点の発見、そして同じ人間としての嬉しさを感じさせてくれました。

著者は障害を持つということについて、次のように考えています。
障害者は決して不幸ではないと思っていますが、幸せになるためには自分なりの価値観を持つことが重要です

僕らはつい、障害を持つ人々に対して「かわいそう」だったり「つらい」などの感情を向けてしまいがちです。
著者はそれでも不幸ではないと言います。
そして、幸せになるために重要なのは「自分なりの価値観を持つこと」と述べています。
この言葉に僕はハッとさせられました。
なぜなら、この著者の言葉は健常者にも言えることだからです。
そして、勝手に不幸であろうと決めつけていた考え方を当事者から否定をされたからです。

自閉症は意外に身近な障害


みなさんは自閉症についてどれくらいの事を知っていますか?
僕は恥ずかしながら全くと言っていいほど何も知らず、本書を読むまでは名前しか知らないものでした。

本書には、
自閉症スペクトラム(自閉症と、その近縁の障害)の人は「百人にひとり存在する」ともいわれる一方で、症状や程度が非常に多様なことなどもあり、一般の人には理解されにくい障害でもあります

と書かれています。

百人にひとり…
かなりの割合で存在する障害なのだと思う一方で、それだけ他人にはわからないくらいの症状から、すれ違うだけでわかるような重い症状の方まで幅広い症状が存在するのだと実感しました。

自閉症を持つ人は、電車やバスなどで奇声をあげることがあっても、心のなかでははっきりと判断もでき、周りの視線にも気づいているのです。
ただただ自分自身がコントロール出来ないのです。
声は、呼吸するように僕の口から出てしまうのです。自分の居場所がどこにあるのかわからないのと同じで、どうすればいいのかを自分で決められません。僕は、まるで壊れたロボットの中にいて、操縦に困っている人のようなのです。

著者の表現ひとつひとつが、今まで僕が持っていた自閉症のイメージを壊していきます。

行動が故に誤解されることも


自閉症の人は自らが望まなくとも、その行動の印象から間違ったイメージで捉えられることが多いといいます。
途中、記者のインタビュー中の描写です。
東田さんは席から立ち上がり、床に寝転がってしまった。自閉症の人は、このような行動によって「嫌なのかな」「やる気がないのかな」と誤解されてしまうのだという

しかし決して嫌なわけでもやる気がないわけでもないのです。
落ち着かない空間や慣れない人などの前では自身をコントロールすることが普段より難しくなります。
僕は行動を自分の意志でコントロールするのが難しいのです。そのために、気持ちに折り合いをつける必要があります。だから、時間がかかるのです

自閉症の人とのコミュニケーションには時間がかかるといいます。
イライラせず、しっかりとコミュニケーションを取ろうとしてくれれば会話もできるし、意思疎通もできるのです。

この本を読んで、自閉症に対するイメージが180度変わったことはもちろん、「わからない」から避けていたコミュニケーションに新たに挑戦できる勇気も貰いました。

Amazonでのレビューには、自閉症の子供を持つ親や、自らが自閉症を持つ人々の感謝のコメントが多くありました。

価値観の変わる良著です。
是非一読ください。